9 尿道ブジー

ていいちOTP

   予定通り膀胱カテーテルを付けたまま2週間の不自由を凌ぎました。“在宅入院”だと自分に言い聞かせ入院よりはずっと楽だと考えました。当初はやはり大変だったのですが少しずつ慣れてくると余り考えることもなくトイレでカテーテルの先の栓を抜き挿しするようになりました。ちょっと困ったのは栓を抜いて排尿するとき、どうしてもカテーテルの管の脇からも尿が噴出することでした。尿の勢いがあるときは尚のこと困りました。


 2週間の“在宅入院”が無事に過ぎ10月20日の予約日にやれやれという気持ちで通院しました。主治医はカテーテルを付けたままの2週間の経過を尋ねたあと処置室へ移るように告げました。

 私はてっきりカテーテルを抜いてくれるだけと思ったのですが、なんと段階的に太い器具を(最終的にカテーテルの何倍も太い器具だと医師が教えてくれました)尿道へ押し込み尿道と膀胱との吻合部を押し広げたのです。勿論無理やり物理的に押し広げるのですから麻酔のゼリーを使っていても酷く痛みました。

 最後に一番太いものを挿し込んだ状態で15分維持しました。思えばあられもない姿ですが治療の場面ですから気にしても仕方がなく、またその余裕もありませんでした。その辛い時間を耐えながら上手く排尿が改善することを念じていました。そして15分後ブジーは終わりました。家に帰って検索し、その治療がブジーと称するものだと初めて知りました。ブジーのあとは吻合部が押し広がったので、尿に血が混じってはいましたが素晴らしい勢いで排尿ができました。

 医師によると押し広げた吻合部は傷になっているので傷が治る際に少し縮小するといいます。その状態で再度ブジーをして押し広げることを幾度か繰り返すのだそうです。繰り返すと聞いて気持ちが折れましたが避けられないなら受け入れるしかないと諦め、医師の指示に従うほかないと受け入れました。

 それまで尿の出口でしかなかった細い穴へブジーの太い棒を挿入し膀胱と尿道の吻合部(膀胱の出口を膀胱頸部といいます)を押し広げることには不安がありました。何とか知識を得たく検索して幾多のページを読みました。中にはネガティブなページもあり、其処にはブジーにより物理的に押し広げると傷口が治る際に収縮し尿道が広くなり難いばかりか幾度もブジーをやると傷口が肥厚し固くなる。そうなればもはや医原病といってもいい、などという怖い記述もありました。


 そんな不安を抱きながらもブジー1回目のあと排尿の様子は順調で、もうブジーはしなくても…という気持ちで11月2日の通院予約日を迎えました。相変わらず長時間廊下で待機したあと診察室へ入り排尿の様子を話しました。主治医は安心したようなそうでないような顔で「やはり(念のために)もう1度ブジーをしておいた方がいいですけれどね」といいます。私は尿が出難くなっていた時を思い出し「それじゃぁもう1度お願いします」と答えました。


 処置室へ移動して前回同様まず麻酔ゼリーを付けた棒を尿道から挿し入れました。かなり強い痛みを感じました。医師は「これで出血するってことは…(狭くなっているってことだ)」と独り言のように口にしたあと前回のように幾分細い棒から順に太い棒に替えていって最後の太い棒を入れると、看護師さんへ「じゃぁ15分」と言い残して診察室へ戻りました。

 確かにこの2回目のブジーは前回よりも遥かに痛く苦しい思いをしました。痛みを堪えるのに緊張感で手足が震えました。15分が経過してブジーの棒を抜いたあと、3回目が無いことを祈りながらクルマを走らせました。

 次回の通院は手術のあとの通院時の予約どおりの11月30日で良いが、もし再度排尿に問題が出たなら“緊急”扱いで診察予約を取るということになりました。しかし幸いこのあとは順調な経過を辿ることになるのでした。

次は 10_手術後半年以降

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