4 ダビンチ手術

ていいちOTP

 全摘手術は前立腺が背中に近い処にあるため患者の負担が大きいものですが、どうであれ手術の方がきっぱりすると思いました。なお手術をしても完治しない割合は25%程度だと書かれているページもあります。この完治しない割合を示す数字は放射線療法でも同じようなものらしいです。すると体にメスを入れない放射線療法の方がいいのか…。実は最後まで迷いがありました。


 そんな時、ふと県立病院の医師が口にした言葉を思い出しました。ネットにもその項目がありました。『ダビンチがいいというなら、まぁ…』ダビンチとはダビンチ手術のことでした。その頃はもう必死になって検索し続けていました。そしてダビンチ手術のページをたくさん読んだ末、ぜひダビンチ手術で全摘して貰いたいと、ダビンチ手術が最も納得できると、思うようになりました。
 

 ダビンチ手術という名は歴史上の天才“レオナルド・ダビンチ”に因んで名付けられたそうです。この手術は腹に穴を5個ほど開けてコンピュータで動く細いアームを背中に近い場所にある前立腺まで挿入します。1つの腕には照明とカメラが付いた腕です。

 手術に当たる2本のアームはコンピュータ制御です。医師は少し離れた処で患部の映像を見ながら手元のコントローラーで操作します。腹に5個の穴を開けると言ってもあくまで穴です。腹を切り開く従来の手術よりもずっと負担が小さいと思いました。また医師が操作する際、僅かな手の震えがあってもコンピュータでそれをキャンセルできるというのです。また通常なら見えない裏側〈背中側)へも2本のアームとカメラが届き、相当に拡大された映像を見ながら操作ができるというのです。この手の震えをキャンセルできるということと背中側へもアームが届くという点が画期的で安心できると思う点でした。


 しかし腹部に手術歴があり、それが原因で臓器の癒着があるとダビンチ手術ができない場合があるとか、ダビンチ手術であっても従来の開腹手術であっても手術後に排尿障害が残る可能性は同じと言います。ただ結果的に旨くいかない可能性は大きくはありません。そしてここでも正常性バイアスが働きました。やはりどうしても良い方に賭けてみたくなるのです。私もこの時には予後に吻合部狭窄という辛い症状が出るとは想像していませんでした。


 あれこれ迷いながらも考え通して結論を出しました。ガンが前立腺内に留まっていて全摘手術が可能な状態ならダビンチ手術をして貰おうと心を決めました。しかしもしガンが前立腺の外まで広がっていれば手術では対応できずホルモン療法や抗がん剤による治療になります。いずれにしても逃げられないのですから静かに結果を待つ気持ちになりました。

 それでもなお前立腺内に留まっていることを祈りました。それまでの人生を振り返ってみると意気地がなく逃げることを数多繰り返しながら過ごしてきました。しかし前立腺にガンが見付かって、もはや逃げることができません。どうしても逃げることができない状況は人生で初めての体験でした。それでも積極的にガンに立ち向かおうという気持ちにはなりませんでした。逃げられないというだけで厳粛なずっしり感がありました。

次は 5_手術その2

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