ていいちOTP

7_ Sprinter 
 7_Sprinter……diesel sprinterと同じ世代から2世代後のガソリン車です。モデルチェンジ後2年してマイナーチェンジをした型です。Sprinter (diesel) は非常に調子がよく燃費も満足していましたが、この頃から徐々にABS(anti lock brake system)の普及に弾みがついてきました。未だトヨタも全車種に採用していませんでしたがオプションで装備することができました。一日に約80㎞足らずを通勤していましたので冬の凍結路の緊張感が辛らかったのです。そんなある日、暗くなった川の土手道を走っている時にスリップによる自損事故を起こしてしまいました。真っ直ぐで見通しが効いたので油断してスピードを上げたのかも知れません。
 速度を落とそうとしてアクセルを離すと、それだけで滑り始めました。驚いてブレーキペダルに足を移すと更に滑って川側へ前輪が落ちて停まりました。困っているとジープ型の車や他の車が停まって下さり、ワイヤで引いて幾人かが車を押して助けて貰いました。落ちるとき道路端の積雪指標のポールに強く当たりましたが、あとでクルマに傷や凹みが見付かりませんでした。クッション性のある樹脂製のバンパーで濡れた表面が氷になっていたからかも知れません。

 この圧雪路での自損事故の経験を踏まえて慎重にその冬を乗り切りましたが、次の冬が近付いてくる頃ABSを装備した車が欲しくなりました。マニュアルには『ABSは制動距離を短縮する装置ではありません…』と書かれています。確かにその通りです。砂利道では特にそうらしいです。でも氷雪路では路面の抵抗が小さいのでブレーキを掛けると車輪がロックし易いのです。ロックすればコントロール不能です。その為ブレーキペダルを踏んだり離したりを素早く繰り返します。それをポンピングブレーキといっていますが、とっさの時には慌てるのでどうしてもペダルを強く踏んでしまいます。ABSはポンピングブレーキを人間よりもずっと素早く自動的にやる装置です。するとブレーキを踏み続けても車の姿勢をコントロールできるため結果的に安全に短い停止距離で止まれるのです。
 ABSを付けたスプリンターを購入したのは自損事故をした年の秋でした。これはガソリン車にしました。この車はコンパクトカーとしてはでき過ぎ、over qualityという評判どおりに静かで走りも素晴らしかったと思います。この車は私が経験した最も高級な車です。
 80年代のバブルが弾ける前にプランニングされたこの車はコンパクトカーとしてのグレードから抜きん出ていて同じトヨタの上級グレードに接近し過ぎているといわれていました。シートやダッシュパネルなどの内装は高級感が溢れていました。
 点化システムは未だディストリビュータを使っていましたが無接点式に変り耐久性が向上していました。無接点式だとポイント交換の必要がなくmaintenance freeだと誤解されていますがシリンダーへ高圧を配分する部分が火花で磨滅するのでキャップとローターを定期的に交換する必要があります。現在のクルマはダイレクト点火でディストリビュータがありませんので、点火系統はプラグ以外ほぼメンテナンスフリーです。

 この車が10万㎞を越えたとき、例によってタイミングベルトを交換しました。タイミングベルトは歯付きの強靭なゴムベルトですが10万㎞ の定期交換を指定しています。タイミングベルトを交換すると走りが軽くなるのが実感できます。特に加速時など高回転時の滑らかさが戻ります。
 タイミングベルトの交換には特殊工具や計器が必要でDIYはできません。しかし燃料フィルタ交換には挑戦しました。クルマによっては燃料フィルタを交換するのは簡単な作業ですが、この車はエンジンの後の狭い場所にあり工具や手が入り難かったです。営業マンの人に話すと工場でも左のタイヤを外して作業しているということで、私もタイヤを外しましたが非常に時間が掛りました。
 燃料フィルターの交換はマニュアルでは定期交換部品に指定されていません。いつ頃交換するのか直接トヨタへ問い合せると電話で返事をくれました。それによると燃料フィルタの交換は他の部品交換や整備をやり尽くした後に考えることだそうです。でも私の経験では、どの車でも10万㎞を越えた頃に交換すると車が軽く走ることを実感できました。
 また13万㎞を越えた頃にオルタネータのブラシ交換をしました。この作業は整備マニュアルではオルタネータを外すことになっていますが取り付けたまま交換作業をすることができました。オルタネータがエンジンの前にあり作業がし易かったのです。この頃はそれ以前と違ってブラシと取り付け部品がセットになっていてオルタネータ毎の専用部品になっていましたので部品代は少し高価ですが作業が簡単で正確にできました。

 ディーゼル車でクランクシャフトオイルシール交換をしたとき、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりもシャフトのブレ幅が大きいのでオイルが漏れると説明されていましたが、このガソリンエンジンも10万㎞に近付いた頃オイル漏れが発生しました。腑に落ちない気持でしたがオイルシール交換を依頼しました。この時は5年未満で10万㎞未満だったのでクレーム処理をして貰いました。

 Sprinterでは忘れてはいけない危険な経験をしています。それは勤務地から40㎞足らず離れた自宅へ帰る途中のこと、それほど疲れているという自覚はありませんでしたが一瞬の空白のあと気がつくと道路縁石に衝突していました。居眠り運転でした。居眠り運転というのは居眠りながら運転することではありません。それと知らずほんの一瞬、ウツラとしてしまうのです。S字形に緩くカーブした道路でした。運よく対向車などがいませんでした。この事故で左フロントのホイールを交換しアライメント調整をし直しました。居眠り事故でこの程度で済んだことは非常な好運だったに違いありません。

 この車は16万㎞余り使いました。最後は苦い事故の思い出です。信号ですぐ前に停車した車に追突したのでした。左折OKの矢印が出る信号です。この信号は左折OKの矢印が消えたあと黄色に変らない構造でした。運転者にとっては青から突然赤になるのと同じです。青の矢印が消えたあと一旦黄信号が灯ってから赤になれば直前の車は黄が灯っている間に交差点へ侵入することができます。
 すぐ前の車は矢印が消えたあと急停止したのかも知れません。丁度その時私は一瞬脇見をしていたのでしょう。力一杯ブレーキを踏みました。でもあえなく追突してしまいました。4月の初旬のことでした。頭が白くなりました。たくさんの厭な思い出が残りました。
 相手の過失がゼロの場合、相手の保険会社は交渉に参加しません。こちらの保険会社が相手と直接交渉することになります。しかし相手は納得せず直接加害者である私に交渉を持ちかけてきました。法的には保険担当者が提示した条件で通用しますが押し通そうとすれば、かなり辛い緊張の日々を送らねばなりません。事故の時に運転していた相手の親は我が家へ乗り込んできたり職場の上司へ電話を掛けたり、職場の上部機関へクレームをつけたりしました。相手の立場では未だ使えるクルマなのに修理費用を要求できず小額の時価しか補償されないのですから不満は理解できますが…。

 もし少しでも相手が動いていれば相手の保険担当者が交渉相手になるので保険会社同士の交渉になり、結果に不満があっても保険担当者を飛び越えて相手に交渉することは少ないのです。この事故では相手の車の年式が古く中古車としての査定額よりも修理費用のほうが高額になりました。その場合、賠償額は中古車としての査定額になります。つまり修理での対応ができなかったのです。年式の新しい車であれば中古車としての価値が大きいので修理費用がクルマの市場価格を越えることは少なくなります。

7_ Sprinter 

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