ていいちOTP

 10_Vitz……Sprinterが全損になったので已むなく車を購入することになりました。候補は燃費が良く以前から好ましく思っていたVitzしか思い浮かびませんでした。購入時の交渉など望む余地なく決定しました。それまでトヨタでは排気量の小さい車でも1200ccでした。過去にはパブリカなど800cc車もありましたが、それは自家用車の黎明期に限られます。
 Vitzは実用的で高性能なトヨタ初のリッターカーと云ってもよいでしょう。Vitzの印象は非常に良かったです。リッターカーといえば初期のCharadeしか経験がありませんでした。Charadeは軽く走りましたが安定感が乏しいという記憶があります。高速道路を100㎞/hで走ると車全体が震え、その振動と走行音に不安を覚えました。でもVitzはボディが震えることもなく走行音も比較的静かで安定した走りを見せました。明らかにひと頃のリッターカーの性能を越えていました。燃費も当時としては悪くありませんでした。この車を14万㎞使いましたがSprinterのようにクランクシャフトのオイル漏れはありませんでした。またドライブシャフトブーツは経年劣化による亀裂が入り難い形状に作られていました。

 このクルマも10万㎞を越える頃、燃料フィルタを交換しようとしました。Vitzのフィルタは燃料タンクの上部に位置しているので後部座席を外しての作業です。座席を外し室内側のカバーを外し燃料タンク側のカバーを外そうとしましたが小さなネジがきつく締まっていて外れません。きちんとプラス溝を合わせて回しましたが少しも緩まずナメてしまいました。経験的にはそんな時、ネジの頭をプライヤで強く挟んで力技で回すのですがネジの頭部も小さく確実に掴めません。それ以上深追いすると面倒になると考え諦めてディーラーへ依頼しました。
 数日後に作業が終ったという連絡でクルマをとりに行きました。するとエンジンを掛けた時から調子が良くなっていることが実感でき、オートマのクリーピングが強くなっているのが分りました。やはり燃料フィルタの交換は大いに走りに影響があります。

 途中でギブアップしたこの作業と同じように大いに苦労した作業がありました。それは最初のオイルフィルターの交換作業でした。いつものようにきちんと工具を使用して作業をしていましたがフィルタが弛みません。作業のしづらい場所にあったのでレンチが正確にフィルタの筺体に掛らなかったのかも知れません。しかし余りにも硬く締まっていました。仕方なく工具を替えて挑戦しているうちに、なんとフィルタが凹み始め更に穴が開いてしまった時初めて少しだけ弛んだのでした。そんな経験は初めてでした。
 ボルトやナットは太さや相手の材質によって締め付けトルクが決められていますので経時による膠着があるとしても太さと相手の材質に応じたトルクを掛ければ緩む筈です。特殊な箇所を除けば車に使用されているボルトネジ溝のピッチは1つ?です。樹脂や止め金具?に締め込むタッピングスクリュはピッチの荒い木ネジに似た形状をしています。このネジは適度なトルクを掛ければ緩みます。

 この車のエンジンはカムシャフトを駆動するのにベルトを使っていません。NⅢのようにチェーンを使っていました。しかし比較にならないほどエンジン音が静かです。チェーンの構造を改良して騒音を抑えているのだという説明でした。この頃からカムシャフト駆動用にチェーンを使うエンジンが増え始めてきました。ベルトのように10万キロ定期交換部品に指定しなくてもよく耐久性を向上させることができるからでしょう。
 Vitzでは特別の異例の作業を強いる設計の箇所がありました。Vitzの新車展示会に出向いた時教えてくれました。オルタネータベルトなどを交換するとき普通の車ではベルトを緩めれば簡単に交換できます。でもこのVitzではベルトのある右側のエンジンマウントブラケットを外す必要がありました。

 ベルト1本で全部の補機を駆動しているので、古いベルトを外すだけならマウントブラケットを外さなくてもベルトを切ればできるのですが新しいベルトを装着するにはエンジンマウントブラケットの脱着が必要になります。正規ではエンジンサスペンダー?を使うのですがサービスマンはそんな面倒なことをしないということでした。教えて貰った通りに、釣り上げるのでなくオイルパンの下にゴムと板を介してジャッキで上げマウントブラケットを外しました。エンジンマウントブラケットは3個ありますので振動などが無い静止状態で一個を取り外すだけならオイルパンの底に掛る重量がオイルパンを損傷させる程にならないのでしょう。でもジャッキで支える高さを微妙に合わせないとオイルパンを凹ます可能性があるので注意が必要です。

 それにしても作業性の悪い設計です。きっとエンジンの横幅を詰める為にベルトを1本にしたのです。ベルトを複数にすると本数分プーリーを横に並べなければならないからです。しかしそれならどうしてシリンダーを3気筒にしなかったのか疑問です。振動その他、3気筒エンジンの問題は技術的に十分克服されていた筈です。リッターカーなら3気筒車が他社にも複数あります。或いは既存の4気筒エンジンの設計データを利用して1リッターエンジンに設計し直したのかも知れません。

10_ Vitz 

space

10_ Vitz 
inserted by FC2 system