17 テレビこもごも

ていいちOTP

  テレビがデジタル化してだいぶ経ちます。フルHDの映像は流石に美しいです。きめが細かく鮮やかな『絵』を見せてくれます。余りに美しくて風景の映像ではその彩りの印象が強過ぎると思えるほどです。
 実はテレビの映像は彩りを調整できます。デジカメにも『彩度』を調整できるものがありますが、それと同じです。実はデジカメもテレビもその『絵』は作られたものなのです。だから画面を好みに合わせて調整すると気持ちの良い映像を楽しむことができます。

 関東圏ではチャンネルが沢山あって羨ましいと思っていましたが新潟のチャンネル数で十分だと悟った。横浜にいる息子宅でチャンネルを次々に変えても中身はあまり変わり映えがしなかったのです。我家では長らく午後7時近くなるとNHKを見ます。天気予報など、どこも同じですが幾分NHKのほうが真摯な感じがします。変にはしゃぎがなく真面目な雰囲気があります。天気予報の前に幾つかの短いプログラムを見せてくれるのも楽しめます。
 ただ男性と女性のアナウンサーがバトンリレーのようにアナウンスを交代するタイミングは事前の打ち合わせなしには無理で、わざとらしさが強いと思います。

 ところでNHKが民放と異なる点は何処でしょう。最近は視聴率を気にしてか他局と同じように笑いを取る番組が増えてきたように思いますが、まだまだ製作意図をはっきりさせた小気味の良い番組が多いようです。対象とする視聴者や興味のジャンルを絞っています。それが感動を与える理由でだと思います。
 NHKはかなり乱暴な理屈で『視聴料』を集めているのですから民放のように視聴率など気にしないで中身の濃い作品を作って欲しいものです。
 NHKの番組作りについて疑問に思っていることもあります。例をあげますと、水曜日の夜に放送している科学番組では進行役を女性アナと男性落語家が務めています。メインの進行役は落語家です。しかし局アナ二人が進行役でも十分魅力のある番組です。その落語家が嫌いなのではなく、むしろ好ましく思っている人ですが、中身で勝負できる番組にも拘らず人気者を進行役に据えて視聴率向上を狙う必要はありません。正論に過ぎるかも知れませんが、中身の濃い番組なら人気者を起用する必然性はないと思うのです。

 NHKといえば日曜日の午後に放映される『NHKのど自慢』を殆んど毎週見ます。妻が観ますので私も見るか或いは隣の部屋で聴いています。毎回色々なジャンルの歌が披露されますが年齢によって大まかな傾向があります。
 若い人が懐メロを歌うことはなく年配者が若い人の歌を選ぶことも少ないようです。互いに歌詞の内容が感性に合わないということもありますが、年配者は若い人向けのテンポやメロディーの速度についていけないというのが本当です。ではゆっくりしたテンポの懐メロや唱歌ならきちんと歌えるかというと、そうとも限らないようです。

 耳で聴いた曲をそのまま自分の声で歌えるかどうかは幼少期の音楽的な環境の影響が大きいのではないでしょうか。のど自慢で年配者と若い人を聴き比べると、それがほぼ当てはまっています。若い人はテンポが速く音程の上下が激しい曲でも、とても上手です。年配者でも音程がしっかりしている人は多いですがテンポが速い曲になると上手くいかない場合が多いようです。

 『のど自慢』では20名の出場者が歌い終えたあと、ゲストの歌手が唄ってくれます。やはり流石と思わせる素晴らしい喉であり、つくづくプロの歌唱力は凄いと思います。そしてふと考えます。
 物心ついた戦後の貧しかった頃にきら星のように現れ、その歌声で日本人を鼓舞した歌手たちは市井の人たちには手の届かない存在で、それゆえ眩しかったのです。おそらく戦後という時代が生んだスターだったのでしょう。
 あの頃よく耳にした歌はどれも圧倒的に現在よりもテンポが遅いのです。そして思い返せばどんな歌手もカリスマ性の高いスターでしたが、歌唱力は現在の歌手ほどではないと感じます。現在はカラオケもあって歌う人たちの裾野が広くなりました。歌手の数も多く身近になり“スター性”は低くなっているますが、歌唱力はあの頃のスター歌手よりも優れていると思うのです。

 同じようなことが俳優にも言えます。中学・高校生の頃、人気スターが幾人もいました。あの頃のスターのカリスマ性は現在の俳優よりもずっと高かったと思います。往年のスターは憧れの雲の上の人でした。出演する映画は現実の暮らしとは無縁で、異次元といってもいいような贅沢な非日常を描いていました。俳優が口にする言葉も日常なら歯の浮くような台詞でした。
 演技もかなりオーバーでわざとらしかったと思います。
 近年の映画は普通の人々の日常を描いた作品が多いようです。作品のテーマも日々の暮らしに密接なものです。
 映画の登場人物は憧れの存在でな、く身近に想像できる人になり感情移入がし易くなっています。そしてやはり俳優の力量も昔のスターと比べるとずっと優れていると思うのです。

 戦後のスターは雲の上の存在ゆえ、その描かれるハイソな世界と相俟って憧れの的になっていたのでしょう。それは未だ貧しく日々刻苦勉励しなければらなかった時代のヒーローやヒロインでした。つまり『時代が生んだスター』だったのです。現在の力量のある俳優はもっと質の高い演技をしていると思うのです。

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